学習通信090106
◎諸君の成功は確実だ……

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大ブリテンの労働者階級へ

労働者諸君!

 諸君に私は一冊の本をささげる。そのなかで私は、諸君の状態、諸君の苦しみとたたかい、諸君の希望と展望を、わがドイツの同胞の前に忠実にえがきだそうとつとめた。

私は諸君の環境についてある程度知るのには十分長く諸君のあいだで暮らしてきたし、その知識をえるために真剣に注意を払い、また人手できるかぎりさまざまな公式、非公式の文書を、研究してきた。

──私はそれだけでは満足せず、私の主題のたんなる抽象的知識以上のものをもとめ、諸君の自宅に諸君をたずね、諸君の日常生活を観察し、諸君の状態や不満について諸君と語り、諸君を抑圧しているものの社会的政治的権力にたいする諸君のたたかいを、この目で見たいと思った。

そして私はそうしたのである。私は中流階級の会合や宴会、ポートワインやシャンパンを見捨てて、ひまな時間をほとんどすべて、ふつうの労働者との交際にふりむけた。

私はそうしたことを喜び、かつ誇りに思っている。

喜んでいるのは、このようにして私が生活の実態についての知識をえるのに多くの幸せな時間をすごすことができたからであり──もしそうでなければこの時間はくだらないおしやべりや退屈な儀礼のために浪費されたであろう──、

誇りに思っているのは、このようにして私が、どんなに欠陥があろうと、どんなに不利な状況におかれていようと、イギリスの金貸し以外のすべての人の尊敬のまととなっている、抑圧され中傷されている階級の人びとを正当にあつかう機会をもったからであり、また、諸君を支配している中流階級の残忍なほど利己的な政策やその行動全般の必然的結果として、大陸でますます軽蔑されるようになってぎているイギリス国民を、その軽蔑から救いだす立場に私がおかれたからである。

 同時に私は、諸君の敵である中流階級を観察する機会を十分にもったので、私はすぐに、諸君が彼らからはどんな支援をも期待していないのは、正しいし、まったく正しいと結論するにいたった。

彼らの利害は諸君の利害と真正面から対立していみのである。

たとえ彼らがその逆のことを主張し、心から諸君の運命に同情しているのだと諸君に信じこませようと絶えず努力しているにもかかわらず、利害は対立しているのだ。

彼らの行動は彼らの主張が嘘であることをしめしている。

中流階級は──どんな勝手なことをいっているにせよ──諸君の労働の産物を売ることができるあいだは諸君の労働で自分たちがもうけることを考え、この間接的に人間の肉を売買する商売から利益をあげることができなくなると、すぐ諸君を見捨てて餓死に追いやること以外は、実際にはなにも考えていないという事実について、私は十分すぎるほどの証拠をあつめたと思っている。

彼らは諸君にたいして善意をもっていると称しているが、それを証明するためになにをしただろうか? 彼らが諸君の苦しみに、いくらかでも真剣な注意を払ったことがあったろうか。

彼らは六つほどの調査委員会の経費を負担しただけではないだろうか、そしてその委員会の膨大な報告書は内務省の書棚の紙くずの山のなかに永遠に埋もれてしまう運命にある。

このぼろぼろになりつつある青書から、「自由の身に生まれたイギリス人」の大部分の人の状態について、誰でも容易に情報がえられるような手軽に読める本を、たった一冊でもまとめようとしたことが、彼らにはあるだろうか。もちろん、彼らはやらない。

これは彼らの語りたくないことなのだ──彼らは諸君が暮らさざるをえない屈辱的な状態を文明世界に知らせるという仕事を、一外国人にゆだねたのである。

 私は彼らにとっては外国人だが、諸君にとってはそうではないことを、期待している。

私の英語は純粋ではないかもしれないが、平易な英語だとうけとってもらえると思う。イギリスでは──ついでにいえばフランスでも──労働者は誰も私を外国人あつかいはしなかった。

私は諸君が、結局は大がかりな利己心にほかならないところの国民的偏見や国民的うぬぼれという、あの危険な呪いにしばられていないのを見て、この上ない喜びをおぼえた──私は、諸君が人類の進歩のために真剣に力をつくすすべての人──イギリス人であろうとなかろうと──に共鳴し、諸君の国土に育ったものであろうと、なかろうと、偉大なもの、善いものすべてを賞賛しているのを見た。

私は、諸君は一つの孤立した国の国民であるたんなるイギリス人以上のもの、つまり、人類という偉大な普遍的な家族のメンバーである人間であり、みずからの利益と全人類の利益とが同一であることを知っていることに気づいた。

そのようなものとして、「単一不可分の」人類という家族の一員として、言葉のもっともつよい意味での人間として、私とその他、大陸の多くの人びとは、あらゆる方向での諸君の進歩を歓迎し、すみやかに成功するよう望んでいる。

──それではいままでと同じように進め。

まだやり残していることがたくさんある。

断固として、ひるまずに──諸君の成功は確実だ──。

そして諸君の前進のなかの一歩一歩はすべて、われわれの共同の大義、人類の大義に役立つであろう。

バルメン(ブロイセンこフイン州)
一八四五年三月一五日
 フリードリヒ・エンゲルス

(エンゲルス「イギリスにおける労働者階級の状態 上」新日本出版社 p13-16)

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非正規労働者の大量解雇を中止・撤回し、大企業が社会的責任を果たすことを求める
日本経団連・御手洗会長への志位委員長の要求書(全文)

 日本共産党の志位和夫委員長が十八日、日本経団連の御手洗冨士夫会長あてに渡した要求書全文は次の通りです。

 アメリカの金融危機に端を発した景気悪化のもとで、派遣社員や期間社員などの非正規雇用の労働者を大量に解雇する「派遣切り」「雇い止め」が横行し、企業を支えてきた労働者に深刻な打撃を与えています。大量解雇の波は、自動車産業から電機産業、そしてあらゆる産業に広がりつつあります。解雇される労働者も、非正規社員から正社員に及び始めています。この大量解雇を主導しているのは、日本経団連の中核を担う世界的大企業であり、その社会的責任はきわめて重大といわなければなりません。

非正規社員の大量解雇は人道にてらして許されない
 解雇されている非正規社員の多くは、「働く貧困層」であり、親元も頼れず、社員寮以外に住むところもない状況にあります。年の瀬に突然契約を打ち切られ、寮から追い出され、寒空のもとで公園や路上でのホームレス生活に追い込まれている労働者が、すでに全国各地で生まれています。

 非正規社員の大量解雇計画をこのままおしすすめれば、事態はいっそう深刻なものとなることは火を見るよりも明らかです。解雇される非正規社員の多くは、正社員と同じように働き、残業にも、休日出勤にも応じ、高熱があっても、身内に不幸があっても仕事を休まずにがんばってきた人々です。こうした労働者を、真冬の冷たい巷(ちまた)に放り出すようなことが許されるでしょうか。それは、まず何よりも、人道にてらして、けっして社会的に許容されるものではありません。

契約の中途解除、「雇い止め」の濫用、一方的な内定取り消しは法令違反
 いますすめられている非正規社員の大量解雇が、現行の労働法制においても違法か、あるいは違法性がきわめて高いものであることも重大です。

 政府の調査でも、非正規社員の大量解雇計画の六割以上が契約途中の解雇とされ、人員削減計画のほとんどすべてが契約途中の解雇という大企業まであります。しかし、派遣社員であれ、期間社員であれ、有期雇用の契約途中の解除は、労働契約法で「やむを得ない事由」がある場合でなければできないと定められ(一七条1)、この法律でいう「やむを得ない事由」とは、「解雇権濫用法理における『客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合』以外の場合より狭いと解される」(労働契約法施行通達)とされています。さらに、その証明責任は企業の側にあるとされています。「業績悪化」などという一般的な理由での解雇は違法であるというのが現行法理です。契約満了による「雇い止め」や、大きな社会問題になっている一方的な内定取り消しも、その濫用は違法とされています。

 法令順守が、企業の社会的責任の最低限の土台であることは、立場の違いをこえた共通の認識であると考えます。日本経団連の会員企業が、法令違反の謗(そし)りを受けるようなことはあってはならないことです。

大量解雇が避けられないとする合理的理由は考えられない
 大量解雇をすすめている大企業のほとんどが、「減益見通し」というだけで、利益もあげ、株主への配当も減らさず、巨額の内部留保も持っています。大量解雇の先鞭(せんべん)をつけた自動車産業では、トヨタ自動車をはじめとした主要十三社が二万人近い人員削減計画を発表していますが、業績見通しを下方修正しても、なお二兆円規模の経常利益を見込み、今年九月には株主に三千八百億円の中間配当をおこなっています。内部留保残高は、〇〇年九月の十五・三兆円から〇八年九月の二十九・四兆円に、ほぼ二倍にまで積みあがっています。株主への配当を一割から二割減らす、あるいは内部留保を0・2%程度取り崩すだけで、人員削減を中止し、雇用を守ることができます。景気の後退局面で生産調整を行うことは、当然ありうることですが、こうした大企業がただちに大量の解雇を行わなければならないような切迫した事態にあるとは到底考えられません。

日本経済を雇用破壊と景気悪化の悪循環に突き落とすことになる
 この大量解雇を放置するなら、景気悪化をくいとめる歯止めをなくしてしまいます。日本経済を立て直す道は、外需依存から脱却し、内需に軸足を移す以外にないという認識は、立場の違いを超えて広がっています。内需を活発にすることが景気悪化をくいとめ、景気回復に向かう唯一の道であるときに、大企業が競い合って大量解雇をすすめるならば、どうなるでしょうか。それは家計消費の落ち込みをもたらし、さらに生産の減退や設備投資の減少をもたらし、日本経済を雇用破壊と景気悪化の悪循環に突き落とすことになるでしょう。個々の企業にとっては、人員削減は、瞬間的には、その財務状況を良くしたとしても、それがいっせいに行われるならば、経済と社会の前途を危うくすることになります。それは、企業の存立・発展を展望しても、自殺行為ではないでしょうか。

大企業の社会的責任を自覚した行動を緊急に求める
 日本経団連の初代会長である奥田碩氏は、かつて「不景気だからといって、簡単に解雇に踏み切る企業は、働く人の信頼をなくすに違いない。そして、いずれ人手が足りなくなったときには、優秀な人材を引き止めておけず、競争力を失うことになる」、「仮に現在、人が余っているというのなら、その人材を使って新しいビジネスに生かす努力をしてこそ、経営者というものです。それもできないようでは、経営者の名に値しません」(「経営者よ、クビ切りするなら切腹せよ」)とのべています。こうした精神にたって、経営者としての責任を果たすことが、いま求められているのではないでしょうか。

 日本を代表する企業千三百十五社、製造業やサービス業等の主要な業種別全国団体百三十団体、地方別経済団体四十七団体を擁する日本経団連が、大企業の社会的責任を深く自覚して、以下の事項の実行をはかるように、緊急に求めるものです。

 1、会員企業等にたいし、大量解雇計画の中止・撤回を働きかけられたい。

 2、違法な解雇、解雇権の濫用をおこなわないよう労働法制の順守を求められたい。

 3、不当な内定取り消しなど、社会的責任を放棄した行動をやめるよう働きかけられたい。

 4、労働者が解雇によって住まいまで奪われ、路頭に迷うような事態を引き起こさせないために万全の対策を講じるよう働きかけられたい。
(「赤旗」20081219)

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「ルールある経済社会」への一歩を踏み出す年に
志位委員長の新春トーク
聞き手
奥原 紀晴 赤旗編集局長
大内田わこ 編集局次長

 奥原紀晴編集局長・大内田わこ局次長 明けましておめでとうございます。
 志位和夫委員長 おめでとうございます。

雇用・生活――社会的反撃が始まった

 奥原…… 昨年は、情勢の激動と変化という点でも、党の活動という点でも、文字通り疾風怒濤(しっぷうどとう)の年でした。一年をふりかえって、一番印象深く残っていることはなんですか。

 志位…… 昨年末のNHKニュースのトップで「ついに労働者が立ち上がりました」と報じました。いすゞ自動車で、違法解雇撤回を求め、期間・派遣労働者のみなさんが労働組合をつくって立ち上がったというニュースです。このニュースが一番うれしかったですね。

 日本共産党は、二〇〇六年の第二十四回党大会で「社会的連帯で反撃を」ということを打ち出し、暮らしと平和のあらゆる問題で連帯してたたかい、世の中を変えていこうと呼びかけました。昨年は、世界金融危機と景気悪化による、暮らしの非常な危機のなかで、それに「負けていられない」という本格的な社会的反撃が始まった年といえると思います。

 奥原…… 危機は深刻だが、明るい展望もみえてきた。

 志位…… そうです。雇用問題でも、後期高齢者医療制度でも、農業再生でも、あらゆる分野で反撃が始まった。平和と憲法を守る運動もさらに広がった。ここがやはり一番うれしいし、印象的です。あまりにひどい生活苦、人間「使い捨て」について、みんなが「これではいけない」と思っている。社会全体から待ち望まれていたニュースだからこそ、NHKもトップで伝えたのだと思います。

 大内田…… いすゞは、千四百人の期間・派遣労働者を十二月二十六日に全員解雇すると一方的に通告していましたけれど、そのうち五百五十人の期間従業員についてはともかく中途解雇の撤回を決めました。

 志位…… これは重要な前進の一歩だと思います。会社側は、期間従業員への中途解雇を撤回しましたが、なお早期退職を迫り、派遣労働者については解雇の方針を変えていない。引き続くたたかいが非常に大事ですが、大企業がいったん解雇通告をして、それを撤回したというのは、戦後の労働運動の歴史のなかでもあまり例のない、特筆すべき出来事だと思います。

 日産ディーゼル、大分キヤノン、マツダなど、各地で労働者が立ち上がっている。いすゞで労働者のみなさんが勇気をもって旗揚げした、この動きが全国各地に広がり、大きな流れになろうとしている。これはほんとうに未来ある動きです。

大企業に労働者の思いをぶつける
「死人が出ないとわからないのか」という悲痛な訴え

 奥原…… 労働者のたたかいと結んで、委員長ご自身、昨年はキヤノンから始まって、いすゞ、トヨタと会談し、日本経団連とも会談しました。私は、歴史的事件だと思っていますが、党本部にもこんなメールが寄せられました。

 「『歴史が動いた』日になりました。志位氏の記者会見の最後に、路頭に迷うひとが、でないように、がんばっていく、としめくくっていました。首切りを絶対に、許さないとの決意表明に、感激です。すべての、良心ある、ひとびとの心をとらえる、大事な行動です。…歴史の一ページに刻んだ日にばんざい」

 こうした行動を起こそうと考えたきっかけは…。

 志位…… 昨年末、麻生首相との党首会談をやりましたが、政府が本気で乗り出していって、「派遣切り」「期間社員切り」をやめさせようという姿勢が伝わってこない。一方で、大量解雇の波がいよいよ荒れ狂っている。私たちのもとには、「冬に外で寝ろというのか。死人が出ないとわからないのか」という悲痛な訴えが殺到する。そのもとでやむにやまれぬ思いがありました。私たちは野党で、権力を持っているわけでもない。しかし寄せられた労働者の訴えを直接ぶつける責任がある。事実と道理をもって話せば、大企業でも動かざるをえない面もあるだろう。たたかっている仲間への多少なりともの激励になればという思いもありました。

 大内田…… 実際に会談をやってみた感想はどうですか。

 志位…… やはり日本共産党は自由だな(笑い)ということです。大企業と面と向かって話しても、言いたいことが何の気兼ねもなしに言える。企業献金を一円ももらわない、腐れ縁がない党ですから。日本共産党員であることの誇りを、私自身も感じました。

相手も容易には否定できない事実と道理をしめして
 奥原…… なるほど。日本経団連との会談はいかがでしたか。

 志位…… 日本経団連というのは財界の総本山です。日本共産党とは、もとより立場が対立しているわけです。しかし、対立する相手であっても容易には否定できない事実と道理があるはずです。それを「要求書」にまとめあげて、大量解雇の不当性をしっかり説き、撤回を求めるという姿勢が大事だと考えました。

 大内田…… まず人道上許されるのかとズバリのべていますね。

 志位…… 「真冬の冷たい巷(ちまた)に放り出していいのか」と。これには経団連側も結構だとはいえません。「苦渋の選択」だとしかいえない。そして、「雇用の安定のためには、景気回復が求められる」と繰り返すわけです。しかしこんな矛盾した議論はありません。個々の企業でみれば、人員削減をすれば、瞬間的には財務状況を良くするかもしれない。しかし、大企業がみんな横並びで「首切り」競争を始めたら、日本経済の底が抜けてしまって、「景気回復」はいよいよかなわなくなるじゃないですか。そこを話すと、相手は返す立場がないわけですね。

 奥原…… 大企業としても見通しをもってやっているわけではない。

 志位…… そうです。私は、「いま大企業が周章狼狽(しゅうしょうろうばい)してどうするのか」と言ったのです。世界金融危機が起こった、これはたいへんだ、ともかく人員削減をすれば身軽になるだろうと、われもわれもと「首切り」競争をやったら、いったい日本経済はどうなるのか。それは結局は、企業にとっても自殺行為になるではないか。そこは、日本経団連が会員企業に対して、きちんといわなければだめではないですかという話をしました。
(「赤旗」20090101)

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◎「いすゞで労働者のみなさんが勇気をもって旗揚げした、この動きが全国各地に広がり、大きな流れになろうとしている。これはほんとうに未来ある動きです」と。