学習通信090217
◎組合幹部が、労働組合の性格と任務に……

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社会的反撃が開始された歴史的な年

 第一は、暮らしや平和の破壊にたいする社会的反撃が開始された歴史的な年となったということであります。

 わが党は、三年前の第二十四回党大会で、「社会的連帯で反撃を」をスローガンに、暮らしと平和を壊す攻撃にたいして、国民が連帯して立ち上がることを呼びかけましたが、昨年は、雇用、社会保障、農業、平和と憲法など、あらゆる分野で本格的な社会的反撃が開始された年となりました。

 とりわけ労働者と若者がたたかいに立ち上がったことは、特筆すべきことであります。大企業による大規模な雇用破壊という非常事態のなかで、各地で労働者が自ら労働組合をつくって立ち上がり、力強い反撃の一歩が始まったことは、はかりしれない意義をもつものであり、初めは小さくとも、この動きには大いなる未来があります。

「総選挙勝利を党史に刻む年に 「党旗びらき」での 志位和夫委員長のあいさつ」から
(「赤旗」200916)

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労働組合の性格

 これまで第三章、第四章、第五章にわたって、世界の労働組合の発展の歴史をその発生から第二次世界大戦が終わるまでの期間をとって、みてきました。さて、そこでいよいよこの章では、そのうえに立って、労働組合の性格と任務を明らかにすることにします。

 まず、労働組合の性格についていえば、労働組合は、労働者階級の基本的で自主的な大衆組織であり、大衆的性格と階級的性格を統一した、大衆的階級組織であるということです。

 何よりも労働組合は大衆的性格をもっています。大衆的性格とは、労働者であるなら、その人の思想、信条、信仰、性別、年齢のいかんにかかわらず、さらには支持政党のちがいにかかわらず、誰でも加入できる組織であるということです。

 この大衆的性格という点では、労働者階級の政党とはきわめて性格を異にしていることを明確にしておくことが必要です。労働者階級の政党は少なくとも政治信条の一致が必要です。そして、特定の政治綱領にもとづいて団結し、政権を獲得し、政権を維持し発展させることを目的としてつくられた組織であり、それは労働組合のような、初歩的な大衆組織とはちがう、より高度な組織です。

 大衆的性格をもつ労働組合は、何にもとづいて団結するかといえば、それは、労働者階級としての共通の要求です。どんなに思想・信条、さらには支持政党がちがっていたとしても、資本主義のもとでの、そのおかれている立場、資本によって搾取されているという立場からは必ず共通の要求が生まれてきます。この共通する要求にもとづいて団結する組織が労働組合です。

 そして、労働組合のもつ、こうした大衆的性格によってこそ、もっとも広範な労働者を結集することが可能となり、他の労働者階級の組織である労働者政党、協同組合、文化団体、サークルなどでは決して代行することのできない、任務や役割を果たすことができるのです。ここにこそ、労働組合は労働者階級の基本的な大衆組織であるという理由があります。

 それとともに労働組合は階級的性格をもつ組織です。この階級的性格とは二重の観点からみることが必要です。

 第一に、労働組合は労働者階級に所属する人びとによってだけ組織された階級組織であるということです。つまり、資本家側や当局側に立つ人びとの加入はみとめることはできず、さらには農民や自営業者を加入させることはできないということです。

 第二に、労働組合は、労働者階級の共通する要求を実現するために相互に団結して、資本家側や当局側とたたかう組織であって、単なる親睦団体、共済団体、文化団体ではないということです。

 そして、資本家側や当局側とたたかうために、何よりも大切なことは相手から独立した自主的で自立した組織でなければなりません。

 労働組合の組織、運営、人事、財政など、すべての面にわたって資本家側や当局側の支配介入を許さず、断固として自主性を堅持しなければなりません。相手に従属していては、相手とたたかうことはできないことは自明の理です。

 労働組合は、以上のような大衆的性格と階級的性格をあわせもつ組織であり、両者を統一した大衆的階級組織(あるいは階級的大衆組織ともいいます)であるということができます。この大衆的性格と階級的性格は、本質的には統一されており、相互に矛盾する性格のものではありません。なぜなら、労働組合が大衆的になればなるほど「数の力」が増大し、それによって要求実現をめざすたたかいが発展し、階級的な戦闘力が強化されていくことになるからです。

 しかし、現実には、しばしば、この両者は矛盾しあうことが多いのです。たとえば、大衆的性格だけを一面的に追求すると、数だけはふえても力にならず、階級性がうすめられ、たたかわない方向に、単なる親睦団体に労働組合が変質させられていく危険をもっています。

 また逆に、階級的性格だけを一面的に追求していくと、階級的自覚のおくれた労働者はついていけず、労働組合から脱落していき、こうして数が少なくなり、結局は労働組合としての力を失っていく危険があります。

 そこで、労働組合運動を実際におしすすめていくにあたっては、つねに、この大衆的性格と階級的性格を正しく統一して発展させていくための配慮と努力をつみ重ねていくことが必要となります。そして、この大衆的性格と階級的性格を統一させていくうえでの労働組合活動上の根本的原則こそ、労働組合民主主義とよばれるものです。

 民主主義とは、つねに少数者である権力者の立場ではなくて多数者である勤労人民の立場に立ち、勤労人民が主人公であるとする思想、行動、政治理念、政治形態などのことです。また、民主主義と自由は不可分一体のものであり、「生存の自由」「民族の自由」「政治的市民的自由」という「三つの自由」を守り、@すべての人間の生存権、Aすべての民族の民族自決権、B一人ひとりの思想、信条、言論、出版、結社などの自由、を民主主義的権利として守り発展させることをふくんでいます。そして、労働者階級の基本的大衆組織としての労働組合は、こうした民主主義を守り発展させていくうえで、あらゆる面でその先頭に立って行動しなければならない組織です。

 ところで、労働組合が、民主主義を守り発展させていくたたかいをすすめるためには、何よりも労働組合内部で「労働組合の主人公は一人ひとりの労働者・組合員であって少数の幹部ではない」という労働組合民主主義を、その行動、運営の根本原則としてつらぬいていくことが必要なのです。

 労働組合は、職場での一人ひとりの労働者の不平、不安、不満、要求を大切にし、それをひき出し、それを基礎に徹底した話しあいを行なうなかで、共通する要求をみつけ出し、みんなで要求をきめることが必要です。また、どうしたらその要求を実現することができるかを相談しあうなかで、一人ひとりの階級的自覚をたかめ、みんなで行動していくことが重要です。「一人の百歩より百人の一歩」をかちとるための労働組合民主主義の徹底した実践こそ、大衆的性格と階級的性格を統一させて発展させることができる唯一の保障となるものです。

 つぎに、ここでわが国の労働組合が、こうした労働組合民主主義をつらぬいていくうえで、今日、いぜんとして最大の障害の一つになっている労働組合の機関決定による特定政党支持の義務づけの重大なあやまりについて原則的に明らかにしておくことにします。

 第二次世界大戦後から今日にいたるまで、わが国の少なくない労働組合が、機関決定で民社党や社会党など特定政党の支持をきめ、それを労働者・組合員に義務づけ、選挙カンパや選挙運動を強制することを行なっています。これは労働組合と政党を混同し、労働組合を特定政党の下請化する重大なあやまりです。

 第一に、それは労働組合自身が、日本国憲法に保障された基本的人権の一つである「政党支持の自由」という政治的市民的自由を乱暴にふみにじった反民主主義的な決定を行なっているということです。

 第二に、労働組合は、支持政党のちがいにかかわらず、要求で団結する労働者階級の大衆的組織であるという、初歩的で基本的な性格を逸脱した重大なあやまりであり、それは労働組合の団結を破壊する決定であるということです。

 労働組合はあくまで労働者・組合員一人ひとりの政治活動の自由、政党支持の自由を保障するとともに、これをふみにじる資本家側や当局側の攻撃である企業ぐるみ選挙などと断固としてたたかわなければならないのです。

 そのうえで、労働組合と労働者政党とは一致する要求にもとづき、お互いの自主性を尊重しながら、協力共同の関係を強化していくことこそが、唯一の正しいあり方なのです。

労働組合の任務

 では、以上のような大衆的階級組織としての性格をもつ労働組合の任務とは何か、という点について明らかにしていくことにします。

 結論を先にいえば、今日の資本主義社会での労働組合の任務は経済闘争も政治闘争も、そして思想闘争も、つまり、資本主義のもとでたたかわれている、すべての階級闘争の分野でたたかわなければならないということです。

 第一に、労働組合は日常的な経済的諸要求、つまり、賃金・労働時間その他の労働条件の維持・改善のためにたたかう任務をもっています。こうした経済闘争の任務は、労働組合運動の原点であり、労働組合は、そのためにつくり出されてきたものであることは、すでに労働組合の発生と発展のところで明らかにしてきたとおりです。そして、こうした経済闘争は資本主義がつづくかぎり、くりかえしたたかわなければなりません。そうでなければ、労働者は自らの生活や労働条件を守ることができないのです。また、労働組合は、こうした経済闘争をくりかえしたたかうことによってこそ、より多くの労働者を労働組合に組織し、その「数の力」を増大させていくことが可能となるのです。

 ところで、今日では、こうした経済闘争の多くは、いよいよ政治的性格をもってきていることに注意しておくことが必要です。たとえば、労働者が生活を維持・改善していくためには、今日では賃金闘争ばかりでなく、物価・税金・社会保障などについての諸要求をかかげてたたかわなければなりませんが、これらの諸要求は経済的な要求にはちがいありませんが、しかし、それとともにたたかう相手は主として政府を相手にしなければならないのであり、それらは政治的性格をもつ闘争であり、広い意味での政治闘争の一環でもあるということができるのです。また、公務員労働者の賃金闘争は経済闘争にはちがいありませんが、相手は政府や自治体であるということから、きわめて政治的性格をもつ闘争であるということができるのです。

 第二に、以上のことからも明らかなように労働組合は経済闘争ばかりでなく政治闘争をもたたかう任務をもっています。そして、この点についても、すでに労働組合の発生と発展の歴史のなかで明らかにしてきたところです。つまり、労働組合は最初は経済闘争をたたかう組織としてつくり出されてきたのですが、その歴史的発展のなかで必然的に政治闘争をもたたかう組織として成長してきたということです。

 ところで、労働組合がたたかう政治闘争には、資本主義の枠のなかで政府や自治体を相手として労働者の経済的、社会的、政治的地位の維持・改善をめざしてたたかう政治的改良の闘争と、資本主義の搾取制度そのものをなくし、社会主義の実現をめざして社会変革のたたかいをすすめる政治闘争との二つがあります。

 この二つの政治闘争は、ともに関連しあっており「万里の長城」できりはなされているものではありませんが、しかし、両者は区別しつつ、しかも両者をむすびつけてたたかうことが必要です。前者はたとえば賃金・労働時間・権利、さらには物価・税金・社会保障などに関する法律・制度の改善をめざす闘争がそれにあたり、また後者の典型はさしあたっては選挙闘争であり、また、労働者政党や階級的労働組合の組織と影響力の拡大です。さらに反核・平和運動や国の民主主義を守る闘争の性格は両者にまたがる政治闘争であるということができます。

 労働組合は、こうした政治闘争を労働者階級の政党と協力共同してたたかうことが必要なのです。

 こうして、労働組合は経済闘争も政治闘争もたたかう任務をもっているのですが、ここで大切なことは経済闘争と政治闘争を結合してたたかうことが重要であるということです。

 一方では、くりかえし経済闘争を組織し、それによって広範な労働者をたたかいに参加させ、他方では、それとは別に政治闘争を組織し、両者のたたかいをむすびつけて大きな階級闘争を発展させていくことが必要なのです。そして、こうした階級闘争の発展によって政府・独占資本と労働者・国民との間の階級的な力関係をかえていくことのなかでこそ、経済闘争も政治闘争も、ともに大きな成果を収めていくことができるのです。

 第三に、労働組合は思想闘争をもたたかう任務をもっています。労働組合は思想・信条のちがいにかかわらず労働者の共通する要求にもとづいて団結し、その要求の実現をめざしてたたかう大衆的階級組織であり、思想団体ではなく、思想闘争を主要な任務としている組織ではありません。しかし、労働組合がその主要な任務としている経済闘争、政治闘争をそれぞれたたかうにあたっては、その要求の実現をさまたげ、労働組合の団結を破壊しようとしている、さまざまな反共主義、反民主主義、労資協調主義、軍国主義などの思想攻撃とたたかわなければなりません。そうでなければ要求を実現させ、労働組合の団結を強化していくことができないのです。

 したがって、労働組合は、こうした観点に立って、経済闘争、政治闘争とむすびつけ、労働者階級としての階級的自覚をたかめていくための思想闘争として、広範な労働者を対象に、くりかえし階級的な教育、宣伝、学習活動を組織していく任務をも遂行していかなければならないのです。
(辻岡靖仁・諫早忠義・猿橋真共著「労働組合とは」学習の友社 p42-52)

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労働組合の性格と任務に対応できる組合幹部

 これまで労働組合の幹部のあるべき姿について、いろいろみてきましたが、なによりも基本となる点は、労働組合の性格と任務に対応することができる幹部でなければならないということです。労働者階級とその組織されたたたかう部隊である労働組合は、資本主義が生みおとした産物です。労働組合は、労働者階級の階級的な大衆組織という性格をもって生まれました。階級的とは、資本家階級に対立する労働者階級の立場のことであり、労働組合は労働者階級が自己の経済的・政治的利益をまもるために、労働者階級の広範な大衆によって、組織した部隊であるという性格から、当然のこととして資本家階級とたたかう任務があたえられています。

 「労働組合は、第一の資格においては、資本と労働のあいだの日常闘争──真のゲリラ戦闘──にとって欠くことのできないものであるが、その第二の資格においては、賃労働と資本の支配の制度そのものの廃止を促進する組織された手段として、はるかに重要である」という、マルクスの労働組合の任務にかんする定式化は、労働組合の「労働者階級の階級的な大衆組織」という性格に根ざすものです。

 この労働組合の性格と任務から、労働組合の幹部は、さまざまな思想・信条をもっている広範な労働者を、要求で団結させ、たたかわせるなかで、労働者の階級的自覚をたかめ、やがて彼らの大部分を、資本の支配の制度そのものの廃止=労働者階級の歴史的使命を自覚するまでに、たかめる任務が課せられています。

 このため、組合幹部が、労働組合の性格と任務に対応することができるためには、まず自分自身が労働者階級の歴史的使命を自覚するにたる理論的・思想的学習をすることですし、そして同時に、広範な大衆を団結させ、たたかわせながらたかい水準までひき上げるために、階級性と大衆性を身につけなければならないということです。すでにみてきたように、幹部は、階級性と大衆性をそなえなければならないということは、この見地に根ざすものです。
(細井宗一著「労働組合幹部論」学習の友社 p74-75)

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◎「大企業による大規模な雇用破壊という非常事態のなかで、各地で労働者が自ら労働組合をつくって立ち上がり、力強い反撃の一歩が始まったことは、はかりしれない意義をもつものであり、初めは小さくとも、この動きには大いなる未来が」と。