学習通信090219
◎身にしみる……

■━━━━━

春秋

「身から出た錆(さび)」。この言葉はもともと、無精なお侍を戒める意味があったらしい。身とは刀身のことである。少しでも手入れを怠ると鞘(さや)の中で錆がまわり、いざ真剣勝負の段を迎えても使い物にならず自滅してしまう、という教えだ。

▼G7の後の記者会見も真剣勝負にほかならないだろう。世界が注目するその場で異様な姿をさらし、ごうごうたる非難を浴びていた中川昭一財務相がやはり辞任に追い込まれた。映像を見れば中川氏は刀を錆びるにまかせ、抜くことさえままならぬ様子だった。いや、刀をどこかに置き忘れているのかもしれない。

▼そんな人を重要閣僚に起用し、こんどの騒ぎでも更迭をためらったのが麻生太郎首相だ。その刀もまた錆だらけでは、と疑いたくなる。郵政民営化をめぐって妙な発言を繰り返し、元首相から痛撃を受けたのはつい先日の出来事だった。それこそ宰相の身から出た錆が政権全体にまわり、もう自滅の瀬戸際にある。

▼今この時にも職を失う若者がいる。町工場をたたむ経営者がいる。1円でも安い品を探す主婦がいる。なのに政治はいつまで迷走を続けるのだろう。醜態はなにも中川氏だけのことではないようだ。錆にもいろいろあって「心の錆」といえば心の迷いを指す。それを振り切り、選挙で信を問う覚悟は首相にありや。
(「日経」20090218)

■━━━━━

《潮流》

「子供らに また教えてる 総理の名」(ゆきこ)。サラリーマン川柳(募集・第一生命)の、発表の季節が巡ってきました。「子供らに……」は、百句に入った一つです

▼勤め人が職場や家庭で味わう哀歓を、おかしみにくるんでよみこむサラリーマン川柳。ことしは、身にしみる不況のきびしさばかりか、政治の迷走ぶりを皮肉る句も目立ちます。もう一句あげると──

▼「投げ出すな! 国とは違う 学業は」(真面目な親)。まったく、総理大臣がくるくる変わるようでは、いったいこの国はどうなっているのやら。政権いきづまりは身から出たさびですが、もともと無責任な政治が横行しています

▼四十三年前決まった、「建国記念の日」を考えても分かります。二月十一日は、神話にでてくる神武天皇の即位の日です。紀元前六六〇年。日本列島は、縄文文化の終わりころです。国は、まだありません。先生や親は、子どもに新しい総理大臣の名前は教えられても、「なぜ、きょうが建国記念の日?」と聞かれると、説明しようがないでしょう

▼戦前の二月十一日は、国をあげて祝う紀元節でした。戦後は廃止に。しかし、アメリカとの間で講和条約を結んだら「紀元節を復活したい」と発言し、いまの「建国記念の日」への流れをつくった首相がいました。吉田茂首相。麻生太郎首相のおじいさんです

▼そうそう。ことしのサラリーマン川柳には、麻生首相にまつわる句もありました。「マンガ好き 未は首相と 息子云う」(─凡人パパ─)。
(「赤旗」20090211)

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
◎「宰相の身から出た錆が政権全体にまわり、もう自滅の瀬戸際に」と。