学習通信090324
◎労働者が骨身をけずってつくりあげていく……

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 競争は近代ブルジョア社会において支配的となっている万人対万人の戦争の、もっとも完全な表現である。

この戦争は、生活のための、生存のための、あらゆるもののための、戦争であり、したがってまた、やむをえない場合には、生きるか死ぬかのたたかいになるのだが、それはたんに社会のさまざまな階級のあいだだけではなく、これらの階級の一人ひとりの成員のあいだのたたかいでもある。

どの成員にとってもほかの人が邪魔になり、したがってみんなが邪魔ものをすべておしのけて、自分がそれに代わろうとする。

ブルジョアがたがいに競争するのと同じように、労働者もたがいに競争する。

機械織工は手織工と競争し、失業した手織工や低賃金の手織工は、仕事についている手織工や賃金の高い手織工と競争し、これをおしのけようとする。

しかし、この労働者同士の競争は、労働者の現在の状況のもっとも悪い面であり、労働者にたいしてブルジョアジーが握っているもっとも鋭い武器である。

だからこそ労働者は組織化することによって競争をなくしようとするのであり、だからこそブルジョアジーはこういう組織にたいして憤慨し、それが敗北するたびに勝ち誇るのである。
(エンゲルス著「イギリスにおける労働者階級の状態 上」新日本出版社p123)

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労働組合の基本的な性格と組合民主主義

労働組合の基本的性格

 私たちはすでに、労働組合は、機械制大工業の発展によって、労働者階級がもっている唯一の社会的な力である多数が、共通の要求で団結して、その実現のためにたたかう戦闘部隊として生まれたことを学びました。

 組合民主主義を明らかにするためには、この労働組合の基本的性格について、はっきりとつかんでおくことがたいせつです。

 まずなによりも、労働組合は労働者がその思想・信条、身分、資格、国籍や性別のちがいをこえて、その生活と権利を守るためには、一人ひとりバラバラでは無力であり団結することが必要なことを自覚した労働者なら誰でもはいれる団体です。

 そうであってこそ、労働組合はもっとも多数の労働者を結集することができ、多数の団結の威力を発揮することができることは、いまさらいうまでもありません。

 ここに労働組合の大衆性という具体的な性格があり、階級闘争のなかではたすその積極的な役割があります。歴史的な使命をもち、民主主義の中心的なにない手としての労働者階級の圧倒的多数を団結させることができるからです。

 と同時に、労働組合を構成する組合員は、すべておなじ労働者階級に所属し、本来その階級的立場は共通しており、そのあいだに支配・被支配の関係はなく、対等・平等です。

 それはお互いに階級的立場を異にする異質の複数の階級から成りたっている階級社会とはちがって、同質の労働者から成りたち、もっとも多数の労働者のための、もっとも多数の労働者による、もっとも多数の労働者の組織です。

 ここに労働組合の民主的な性格があり、ブルジョア議会制民主主義と組合民主主義のちがいもここから生まれます。

 つぎに労働組合は、おなじ労働者階級に属する労働者が、共通の要求で団結して、「搾取の自由」に抵抗し、その人間的尊厳と自由を守るためにたたかうことから出発したのですから、当然階級的な性格をもっており、だからこそ労働組合は、労働者にとって生活と権利、自由と民主主義を守るトリデとしての役割をはたしてきたことも、すでにくりかえしてのべたとおりです。

 そして、この階級性は、労働組合が資本家・政府はもちろんのこと、宗教団体や政党などすべての外部勢力によるいっさいの介入・干渉をゆるさず、その自主性を堅持することによって保障されます。

 このような外部からのいっさいの介入・千渉をゆるさないことによって、労働組合はその主体性と団結自治を守り、自らの力で自らの組織を維持し、活動を展開することができるのです。

たたかう武器
──組合民主主義

 この大衆性と民主性、階級性と自主性という基本的な性格は、労働組合が生まれたときから労働組合にきざみこまれ、こんにち、ますます発揚されなければならないものです。

 労働組合民主主義とは、この労働組合の基本的性格に根ざした、労働組合のすべての活動をつらぬかなければならない根本的な原則です。

 組合民主主義によって、大衆性と民主性、階級性と自主性は、はじめて統一され、内においては、一人ひとりの組合員の自発性をよびおこし、総力を結集し、自覚的規律を生みだし、外に向かっては、団結の威力を発揮することができるのです。

 すなわち、組合民主主義は、対内的には大衆性と民主性を、対外的には階級性と自主性を保障し、この両者を統一する原理であるということができましょう。

 こうして労働組合を真の「自覚的階級集団」「戦闘的行動集団」として、固め、きたえあげることができるのです。

 ですから組合民主主義とは、労働者と労働組合が資本とたたかう自由を守り、組合員の基本的人権を保障して、その階級的自覚をたかめ、そのときどきの情勢に対応して、団結と行動力をふるうために、労働者が骨身をけずってつくりあげていく、たたかう武器です。

 さて、労働組合は同質の労働者階級の一員である組合員によって構成されている民主的な組織だといっても、組合員の思想・信条、身分、資格は異なり、ものの考え方も千差万別です。いわんや、支配階級の思想的支配の影響や資本家のきびしい思想攻撃もくわえられます。組合員の階級的自覚の水準や経験もまちまちですから、共通の要求で団結するといっても、けっしてたやすいことではありません。

 また、個人と集団、多数決原理と少数意見、新しい情勢に対応する組合民主主義の発展など、組合民主主義をめぐるさまざまな問題があります。

 これらの主要な問題については、「組合民主主義をめぐる諸問題」(五八ページ以下)で、さらに考えてみることにしましょう。

科学的社会主義と民主主義

 そのまえに、いま一つ、科学的社会主義と民主主義について、一言のべておかねばなりません。

 というのは、科学的社会主義こそ、近代民主主義を、かがやかしい人類の歴史的な進歩的な遺産として正しく評価し、その伝統をうけつぎ、これを充実し、推進することができるのは、ほかならぬ労働者階級であること、そしてこのことが、労働者階級がその終局的な解放をめざす歴史的使命をはたすうえで欠くことのできない任務であることを科学的・歴史的に明らかにしたからです。

 科学的社会主義の理論は、科学的な世界観にたって、人類社会発展の法則性を明らかにし、資本主義から社会主義・共産主義への発展が、歴史の必然的な発展法則であることを証明しました。

 そして資本主義経済の科学的な解剖にもとづいて、労働者階級こそ資本主義的搾取制度の鉄鎖をたち切り、その「墓掘人」となる歴史的な使命をもった特有の階級であること、そして、この使命をはたすためには、労働組合とは別に、労働者階級独自の政党をつくって、政治権力を獲得し、真に多数者のための、多数者による多数者の民主主義を実現しなければならないこと、したがって、民主主義こそ労働者階級と人民の終局的な解放のためのもっともたいせつなたたかいの武器であることを終始一貫して強調しました。

 すなわち、

@近代民主主義の最大のブルジョア的限界は、「搾取の自由」を絶対視しているところにあることを大胆に指摘し、この「搾取の自由」の制限と撤廃が、人間の生存権の保障をふくむ人間的自由の回復と発展のもっとも根本的な道であること

Aしたがって、市民的政治的自由の擁護と拡大を一貫して重視し、労働基本権の確立をはじめすべての国民への普通選挙権の拡大、出版・集会・結社の自由をもっとも徹底した形で実現することを民主主義の根本問題として主張しつづけたこと

Bさらに、各国の進路と運命は、その国の人民が決定するもので、他のどんな国家や民族も、これに干渉することは許されないという、民族自決の権利、「民族の自由」を社会発展の不可欠の前提、原則として擁護し、いっさいの民族的抑圧に反対したこと

Cさいごに社会主義こそ最高の民主主義であり、さらにすすんで「各人の自由な発展が万人の自由な発展の条件」となる共産主義社会への科学的な展望をしめしたこと

 ここに科学的社会主義の民主主義論の核心があります。

 労働者階級は、科学的社会主義の民主主義論をみちびきの糸として、こんにちまで自由と民主主義のためにたたかってきましたし、将来もまた、たたかいつづけるでしょう。
(谷川巌著「組合民主主義」学習文庫 p51-57)

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◎「だからこそ労働者は組織化することによって競争をなくしようとするのであり、だからこそブルジョアジーはこういう組織にたいして憤慨し、それが敗北するたびに勝ち誇るのである」と。