学習通信090325
◎労働組合の努力は狭い、利己的なものではけっしてなく……

■━━━━━

《潮 流》

米政府から十八兆円もの公的資金援助をうけて経営再建中の米保険会社AIG。その経営幹部に約百六十億円のボーナス支払い計画とは驚きました

▼「納税者への背信行為だ」。オバマ米大統領も断固阻止を財務長官に命じたといいます。庶民の怒りが広がって金融安定化や大企業の救済に支障がでたら大変だ。政府は恐れていると米紙は伝えています

▼「金融危機の責任者に高額報酬を払うのなら、労働者の賃金アップや失業対策に使え」。米議会では労働者への利益分配率を高めるため労働組合の力を強めよとの議論が盛んになっています

▼最近、議会に提出された労組の自由選択法案もその一つです。民間企業での労組結成の自由を広げて経営者に労組との交渉義務を厳格に守らせようとする法案で、労組が所属のナショナルセンターの違いを超えて要求してきたもの

▼「経済危機下に経営者に負担をかければ失業を増やす」と、議会では大企業や共和党が反対しています。賛成派は「労働者の購買力向上こそ経済回復の早道」と反論。政府は「無視されてきた労使のバランス回復が大事だ」(サマーズ経済会議委員長)と推進の構えです

▼オバマ大統領も労働者や労働組合の支援に積極的です。就任直後、賃金差別是正の公正資金法に署名した際には、「強い労働運動なしに経済再生のカギである中産階級を強化できない」といっていました。経営者の高額報酬だけでなく、労働組合の役割を見直す米社会のこんな動きに注目したい。
(「赤旗」20090318)

■━━━━━

カール・マルクス
「労働組合−その過去・現在・未来」

@その過去

 資本は集積された社会的力であるのに、労働者が処理できるのは、自分の労働力だけである。

したがって資本と労働力のあいだの契約は、けっして公正な条件にもとづいて結ばれることはありえない。

それは、一方の側に物質的生活手段と労働手段の所有があり、反対の側に生きた生産力がある一社会の立場からみてさえ、公正ではありえない。

労働者のもつ唯一の社会的な力は、その人数である。

しかし、人数の力は不団結によって挫かれる。労働者の不団結は、労働者自身のあいだの避けられない競争によって生みだされ、長く維持される。

 最初、労働組合は、この競争をなくすかすくなくとも制限して、せめてたんなる奴隷よりはましな状態に労働者を引き上げるような契約条件をたたかいとろうという労働者の自然発生的な試みから生まれた。

だから、労働組合の当面の目的は、日常の必要をみたすこと、資本のたえまない侵害を防止する手段となることに、限られていた。

一言でいえば、賃金と労働時間の問題に限られていた。

労働組合のこのような活動は正当であるばかりか、必要でもある。

現在の生産制度がつづくかぎり、この活動なしにすますことはできない。

反対に、この活動は、あらゆる国に労働組合を結成し、それを結合することによって普遍化されなければならない。

 他方では、労働組合は、みずからそれを自覚せずに、労働者階級の組織化の中心となってきた。

それはちょうど中世の都市やコミューンが中間階級〔ブルジョアジー〕の組織化の中心となったのと同じである。

労働組合は、資本と労働のあいだのゲリラ戦にとって必要であるとすれば、賃労働と資本支配との制度そのものを廃止するための組織された道具としては、さらにいっそう重要である。

Aその現在

 労働組合は、資本にたいする局地的な、当面の闘争にあまりにも没頭しきっていて、賃金奴隷制そのものに反対して行動する自分の力をまだ十分に理解していない。

このため、労働組合は、一般的な社会運動や政治運動からあまりにも遠ざかっていた。

だが、最近になって、労働組合は、自分の偉大な歴史的使命にいくらか目ざめつつあるようにみえる。

それは、たとえばイギリスの労働組合が近年の政治運動に参加していること、合衆国の労働組合が自分の役割についていっそうひろい見解をいだいていること、さらに最近シェフィールドでひらかれた巨大な労働組合代表者会議が次のような決議をおこなったことからみて、明らかである。

 「本会議は、すべて国の労働者を一つの共通の兄弟のきずなで結びつけようとする国際協会の努力を十分に評価し、全労働者の進歩と福祉にとって協会が必要欠くべからざるものであることを確信して、本会議に代表を送った各組合に、国際協カヘの加盟を心から勧告する。」

Bその未来

 いまや労働組合は、その当初の目的以外に、労働者階級の完全な解放という広大な目的のために、労働者階級の組織化の中心として意識的に行動することを学ばなければならない。

労働組合は、この方向をめざすあらゆる社会運動と政治運動を支援しなければならない。

みずから全労働者階級の戦士、代表者をもって自認し、そうしたものとして行動している労働組合は、非組合員を組合に参加させることを怠ることはできない。

労働組合は、異常に不利な環境のために無力化されている農業労働者のような、賃金のもっとも低い業種の労働者の利益を細心にはからなければならない。

労働組合の努力は狭い、利己的なものではけっしてなく、ふみにじられた幾百万の大衆の解放を目標とするものだということを、一般の世人に納得させなければならない。(一八六六年)
(『マルクス・エングルス全集、第16巻』大月書店 p195)

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
◎「経営者の高額報酬だけでなく、労働組合の役割を見直す米社会のこんな動きに注目」と。