学習通信090415
◎すずめ……

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《潮流》

花冷えが去り通勤途上の桜が満開です。見上げていると、一輪、二輪と、花が付け根ごとまとまって落ちてきます。桜は花びらが離れて散るはずなのに…。よく見るとスズメが盛んに花の付け根をつついています

▼花のみつを吸っているのでしょう。こうして見るとスズメもなかなか風情があります。そういえばスズメを見る機会がずいぶん減った気がします。年間を通して目にする野鳥といえば、かつては圧倒的にスズメでした。このごろ住居の近くでよく見かけるのは、ヒヨドリ、ムクドリ、カラスです

▼スズメの生息数を調べた人がいます。立教大学・特別研究員の三上修さんです。全国の生息数を約千八百万羽と推計しました。人口に比べると、意外な少なさです。各種の統計データから、一九六〇年ごろの十分の一に減ったとみています。この二十年間でも半分以下に減ったといいます

▼スズメが減った原因は人のくらし方の変化と関係しているようです。スズメが巣をつくりやすい瓦屋根や、すき間のある家屋が減ったのも一因といいます

▼本紙科学欄(三月八日付)で紹介されていた三上さんの調査で興味深かったのは土地利用の種類別のスズメの巣密度です。密度が最も高かったのは住宅地で、森林では調査した三ヵ所ともゼロでした

▼人がいなくなった地域にはスズメもいなくなるといわれます。三上さんの調査結果は、それを裏付けているようです。それでいて、スズメはなかなか人に慣れません。スズメと人の関係は微妙です。
(「赤旗」20090407)

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すずめ

 スズメは四季を通して人家の周辺にもっとも多い鳥であり、また、人家を離れてはほとんど見られない鳥である。そして、スズメは一年中身近にいる鳥だからこそ、鳥の生活にも四季があることをもっともよく感じさせてくれる鳥なのである。

古人は、ふくら雀やむら雀といった言葉でそれをとらえていた。冬のスズメは他の季節のスズメに比べて丸くふとったように見える。鳥は寒い時には体羽を立てて羽毛層を厚くし、いわば重ね着したようにして、体から熱が逃げるのを防ぐ。これは恒温動物である鳥の低温に耐えるための一つの方法を見せているのであるが、古人は目ざとくその姿をとらえてそこに季節を感じていたわけである。

 スズメは草の種子を主食とする鳥であり、したがって大小の群れをなして草むらを渡り歩く生活を基本としていると考えられる。しかし、彼らは樹洞などの自然の孔や人家の屋根瓦の下に営巣するという習性を持っているために、数少ないそのような孔を繁殖用に確保する必要がある。そこで早春から夏までは主として巣孔の近くで生活して、孔の所有権を主張したり、雛へ忙しく餌を運んだりして過ごすことになる。この季節には大きな群れになっていることはほとんどない。

春から夏にかけて二回、三回と繁殖するスズメに育てられる若鳥は、かなりの数に上る。彼らは翌春までは巣孔と関係がなく、よい餌場に集中してしばしば大きな群れをなし、夜は安全なねぐらに大群をなして集まる。親鳥たちがこの群れに入っているのか、秋・冬も巣孔を確保するためにその付近にとどまるのかは、まだよくわかっていないが、スズメの大群が秋のよい餌場である稲田や秋冬のねぐらに見られるのは、それなりの理由があるのである。農家の人びとはこの秋のむら雀を害鳥として見ていた。だが、スズメ害鳥論には問題が多く、まだ決着はついていない。(浦本昌紀)

 スズメ類はユーラシアとアフリカに約一五種があるが、これと他の種子食性鳥類との類縁関係については論議が多く、世界的に一致した結論はまだない。だが、アフリカと南アジアのハタオリドリ類に近いという意見が近年では多い。日本のスズメ(雀)はユーラシア大陸に広く分布しており、日本と中国や東南アジアでは人家付近の鳥だが、そのほかの地域ではイエスズメという種が人家付近にいて日本のスズメと同じ種は林の鳥になっている。日本にはもう一種ニュウナイスズメが北海道から北陸にかけて繁殖しており、これが林の鳥になっているのは面白い。
(荒垣秀雄編「日本の四季」朝日新聞 p178)

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◎「人がいなくなった地域にはスズメもいなくなる」と。