学習通信090507
◎企業スポーツ……

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ニュースがわかる

 野球、アイスホッケー、バレーボール……。経済状況悪化の影響で、強豪といわれた企業のスポーツチームが次々と休廃部に追い込まれている。企業がスポーツから撤退する動きが目立つにつれ、浮かび上がってきたのが「地域密着」を打ち出すクラブチームの存在だ。運営規模や形態が多様化するクラブチームの実態を調べてみた。

企業スポーツ休部 相次ぐ
クラブ、選手の受け皿に
運営規模や形態 多様化

 加盟する三百五十三チーム中、四分の三を占める二百六十八がクラブチームー──。社会人野球では、名門、日産自動車が、野球部の活動を今年限りで休止するなど企業チームにとって厳しい状況が続く。社会人野球を統括する日本野球連盟(本部・東京、松田昌士会長)によると、クラブチームの数は一九九三年に企業チームを逆転、その後も増加している。

垣根あいまい

 給料はなし。昼間のアルバイトで生活費を稼ぎ、練習は夜の限られた時間だけ。元メジャーリーガーの野茂英雄氏が立ち上げ、都市対抗大会にも出湯した「NOMOベースボールクラブ」(大阪)の選手はそれでも白球を追い続ける。

 「みんな野球が好き。(クラブチームの中から)プロ野球のドラフトにかかりそうな選手もいる」と同クラブの清水信英監督は話す。高校、大学などで野球に親しみ、社会に出てもプレーを続けたい選手の受け皿として、クラブチームは欠かせない存在となっている。

 社会人野球にとって企業の撤退という大きな危機はバブル崩壊後の一九九〇年代以来となる。日本野球連盟は、クラブチームが急増していた二〇〇〇年に社会人野球改革委員会を設け、チーム組織や選手処遇、運営費負担など九項目の調査を行い、形態を分析した。

 調査を基に同連盟は、クラブチームを、@小口の協賛企業などに支えられる「複合企業型」A年間予算が数千万円と規模が大きく特定非営利活動法人(NPO法人)や株式会社を立ち上げた「独立法人型」B野球を楽しむ集団の「同好会型」──の三つに分類した。

 同好会型を除いた二つの形態は「地域に貢献する活動」に力をいれるのが特徴。協賛企業や地域住民からの支援を得るため、野球教室やボランティア活動で市民権≠得ようという試みだ。

 一口にクラブと言っても実態は様々だ。「企業チームとクラブをスパッと分けることは難しい」と、連盟の崎坂徳明事務局長は話す。「企業チームの後援会組織が中心になってクラブを立ち上げたり、会社も運営費を支援したりしている」(同)クラブも多い。

 全日本クラブ選手権を二度制した「大和高田クラブ」(奈良)は、地元企業の社員が八割を占め、選手の処遇から見ると極めて企業チームに近いという。一方、新日鉄君津や新日鉄名古屋が運営費の一部を負担し、資本関係のない企業からも協賛を得る「かずさマジック」(千葉)や「東海REX」(愛知)は企業チーム登録している。

企業に復帰も

 景気低迷の影響はクラブ化の流れと逆行する異例の動きも見せている。〇一年にクラブチーム化された「三菱重工横浜」 (神奈川)は、昨年七月に企業チームに復帰したが、どうやら会社の業績とは関係がないようだ。

 強豪の企業チームが多い神奈川県では昨年、都市対抗優勝三度の三菱ふそう川崎が休部になった。この動きを受け、地域内の企業チームの数によって配分されるという都市対抗の出場枠の削減を危惧した同県協会が、三菱重工横浜に企業チームヘの移行を持ちかけたらしい。

 「クラブになったときは、チームがなくなるんじゃないかと思った」と不安を抱いた同チームの松下安男監督だが、「企業チームに戻ったといって、練習時間が少し増えたくらいで、環境が大きく変わったということではない」と実情を語る。

 クラブチームと似たような形ながら、選手は給料を得てプロとしてプレーする「独立リーグ」も各地に立ち上げられている。「クラブチームの増加によって社会人野球のレベルが低下することが心配」と指摘する声もあるが、クラブチームが社会人野球自体の生き残りのカギを握っているのは間違いない。

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クラブ業態変更も
地域密着に活路

 野球にとどまらず様々な競技で企業チームからクラブチームヘの移行は目立つ。休部したラグビーのワールド(兵庫)ではプレーを続ける社員が地元のクラブチームに加わった。アイスホッケーでは撤退する西武に代わり、クラブチームがアジアリーグに参戦する見込みだ。

 「一九九〇年代に運動部の所有目的を明確化した企業が、今では株主対策などとして費用対効果をシビアにみるようになった」。企業スポーツの調査をしている野村総研の三崎冨査雄氏は語る。景気低迷が長引けば、クラブ化の流れは加速するかもしれない。

 クラブチームといえども業態変更≠余儀なくされたチームもある。日本社会人アメリカンフットボールリーグ(Xリーグ)、旧オンワード・オークスの選手らが三月に立ち上げた「相模原ライズ」(神奈川)だ。

 母体となったオークスもクラブチームだった。二〇〇〇年にオンワードの企業チームからクラブチームに移行、すかいらーくの支援も得て、〇六年には日本選手権(ライスボウル)で二度目の日本一に輝いた。

 ただ、実態は企業チームと変わらなかった。クラブと言っても、昨年はオンワード・ホールディングスから広告宣伝費として運営費約二億円を得ており、選手の約二割がオンワードの社員だった。

 昨年、スポンサー支援がなくなったことで、状況が変わった。七十人の選手の大半が現役続行を望む中、新たなクラブ設立が必要となった。

 ライスは「社会情勢に左右されない地域とファンとともに歩む」と理念に掲げる。運営費はオークスの十分の一程度になる見込みだが、総合型地域スポーツクラブ「相模原ライズ・アスリート・クラブ」(NPO法人化を申請中)を設立し、大人月四千円、小中学生三千円の会費を募る。さらに、協賛企業やファンクラブ会員からの支援や、選手が行う引っ越し事業などの自助努力も収入源とし、来年は五千万円の収入を目指す。
(「日経」20090506)

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スポーツサイト
大野晃
スポーツ支援
企業の社会的責任ただせ

 新年早々、トップ競技者に不安の波が広がっている。日本経済をけん引してきた自動車や電機関連の指導的企業群が相次いで減産による人員削減など大幅なリストラ策を打ち出しているからだ。

 国や自治体に代わってこれらの企業群がトップスポーツを総合的に支援してきたのが日本的特徴であり、支援切り捨てが懸念されている。

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 表面的には冷静さを装っているとはいえ、来年に迫ったバンクーバー冬季五輪や3年後のロンドン五輪を目指す競技者たちの内面の動揺は否定できない。企業対抗の色彩が濃い各競技のトップリーグ競技者はさらに深刻である。トップ競技者を目指す少年少女への影響は、はかりしれない。

 プロ化の流れは、企業スポーツ部員の契約社員化やCM契約競技者を急増させ、かつては日本の主流だった企業社員競技者は減る一方にある。プロの華やかさが喧伝(けんでん)されるが、実態は企業の論理に左右される無権利状態の競技者が圧倒的だ。

 1990年代のバブル経済崩壊で95年ころから急激に企業スポーツ部の休廃部が拡大した。しかし「100年に1度」と強調される今回の不景気の嵐の中では、昨年末のアイスホッケー西武の廃部に代表されるように競技全体をリードしてきた企業が一方的に支援撤退に踏み切っていることに重大性がある。さらに景気が悪化すると予測される今秋に向けこうした動向が強まれば、競技そのものの存立の危機となる。

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 3年前に改定された文科省のスポーツ振興基本計画では「企業の社会的責任としてスポーツヘの支援を行うという意識を醸成」とうたったが、具体的な対応策は示さないまま、今回の非常事態を迎えようとしている。

 日本オリンピック委員会(JOC)が企業側に「社会的責任」をただしたことはなく、巨額な資金を要する2016年東京五輪招致の支援を求めるだけで、競技の危機に無力さをさらしている。

 トップ競技崩壊の悪夢が現実になってからでは遅い。今こそ、国が企業側にスポーツ支援の「社会的責任」を厳しく指導し、競技団体とともに責任ある支援策を確立する必要があるだろう。国がリードして日本経団連などの企業団体やJOCや日本体育協会などの競技団体との三者協議が急務だ。

 競技者は権利を守り生活安定のために団結と連帯を強め、各競技や競技のわくを超えた競技者組織の結成に動き出すべきだ。欧米では競技者組織が拡大し、日本でも労組プロ野球選手会が成果をあげてきた。トップ競技者にはファンとともに競技を守る使命がある。(スポーツジャーナリスト)
(「赤旗」20090109)

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◎「プロ化の流れは、企業スポーツ部員の契約社員化やCM契約競技者を急増させ、かつては日本の主流だった企業社員競技者は減る一方……プロの華やかさが喧伝(けんでん)されるが、実態は企業の論理に左右される無権利状態の競技者が圧倒的」と。