学習通信090520
◎ひきつづき産業別の地方組織に残り……

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第2回 職場問題学習・交流講座への報告
幹部会委員長 志位 和夫

──略──

非正規雇用労働者の実態にそくした組織的結集の継続・発展を探求する

 第二は、非正規雇用労働者の実態にそくした、組織的結集の継続・発展を探求することであります。

 一つひとつのたたかいの帰趨(きすう)が、どのようなものとなったとしても、立ちあがった労働者のたたかいを一時のものとせず、ひとたび組織的に結集した労働者が、ひきつづき階級的連帯・団結の道を歩んでいけるように、新たな探求と努力をはかりたいと思います。

 雇用破壊とのたたかいで勝利して、直接雇用・正社員化をかちとるならば、その職場でさらにたたかいを発展させることができます。

 仮にそれがかなわず、職場を移る場合でも、つぎの二つの点で、組織的結集を継続・発展させるように力をつくします。

 一つは、職場を移っても労働組合員として引き続きがんばっていけるような道の探求であります。ある電機産業の大企業で働いていた派遣労働者は、不当な雇い止めに反対するために、組合を立ち上げ、派遣元との団体交渉で解決金をかちとるという重要な成果をあげ、その組合としては解散しましたが、ひきつづき産業別の地方組織に残り、新しい職場が見つかったら、そこに階級的組合をつくって奮闘する決意をのべていました。これまでの労働争議の場合は、解決金をかちとって勝利解決をした場合には、労働組合が解散になり、組織的結集が断たれてしまう場合もありましたが、この間の特徴は、そうした場合でも、階級的自覚を高め、ひきつづき労働組合員として奮闘する決意を固めている場合が少なくないということにあります。これはたいへんに重要であります。

 全労連は、一貫して、地域労連とそのもとでの個人加盟の地域労組(ローカルユニオン)の強化・結成の方針を打ちだしてとりくみを強めています。この地域労組が、産業別の地方組織と並んで、いま全国で「非正規切り」とのたたかいの組織化の主体として力を発揮しています。こうした動きとの連携を大いに強めたいと思います。
──略──
(「赤旗」20090428)

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企業別労働組合から産業別労働組合ヘ──韓国の新たな動き

 企業別組織の限界を克服する動きで注目しなければならないのは韓国です。近年、韓国の労働運動は、企業別労働組合の克服を明確に打ち出し、産業別労働組合への転換を進めています。

 韓国は、戦前以来の日本的労務管理の影響とともに、1960年代から80年代後半までの長い独裁政権下で労働組合が抑圧されました。とくに法制度的に企業別組合組織を強制され、それ以外は許されませんでした。この法制下では、一企業には従業員だけの組合が一つしか許されず、集団的労使関係が企業主と従業員だけの関係に限定されました。弁護士や研究者などが組合で講演しても、純粋な企業内労使関係に外部から干渉したとして処罰の対象とされるほど徹底したものでした。

 こうして独裁政権下で、労働組合は警察力によって強圧され、労働者の過酷な労働条件と無権利な状況が広がっていました。この状況の中で、1970年代以降、弾圧を受けながら、民主労組運動が展開されるのです。長い苦闘を経て1995年にナショナルーセンターとしての「民主労総」が結成されました。一企業一組合を強制する法規制が緩和されて2002年以降ようやく「合法化」され、一企業に複数の組合が認められました。

非正規雇用の急増に対応

 ところが、1997年から98年にかけて韓国経済は、IMF危機と呼ばれる経済危機に巻き込まれ、大きな企業を含めて企業倒産が相次ぎ、失業が急増するというどん底状態に陥ってしまいました。有期雇用や業務請負形式での非正規雇用がー挙に増え、労働者全体の半数を超えてしまいます。2000年5月には、「韓国非正規労働センター」が結成され、労働組合とは別に、非正規労働者の問題を明らかにするとともに、組織化への支援をする活動を開始します。

 2006年末には、民主労総の組合員は発足時に比べて80パーセント増加して75万2000名に達しています。民主労総は、この間、経済危機への対処や非正規雇用問題に取り組むために、企業別組織の連合という現状から脱皮して、ヨーロッパ型の産業別組織への転換を進めることになりました。2005年12月には43・2パーセントに過ぎなかった産別労組への転換率が、2006年末で75・6パーセントに達したということです。2006年には、金属、公共、輸送の各部門が大挙して産業別組織に転換しました。とくに、17〜18程度のヨーロッパの産別に比べて、5〜6程度の大産別組織を目指しているのが特徴で、2007年現在持続的に産別化の取り組みが行われています。

 このように、世界の中では日本と韓国だけが「企業別組合」の国だったのですが、そのうち韓国の最大ナショナルーセンターである民主労総が、産業別組織への転換を力強く実現していることは、大いに注目しなければなりません。たしかに、もう一つのナショナルーセンターである韓国労総は、こうした動きに消極的ですし、世界的な大企業では労働組合が保守化して民主労総の動きに背を向ける危険性があります。

 しかし、厳しい独裁政権の労働者弾圧を乗り越え、さらに、非正規雇用政策に対決する韓国の労働組合は、最も弱い立場の労働者を含めて労働者全体を代表するという組合の本来の姿を見失っていません。韓国の労働者たちが、現在、日本の企業別組合の現状と歴史を反面教師として、ヨーロッパ型の産業別組織を目指していることは大きな教訓になりますし、また、私たちに希望を示すものだと思います。
 (脇田滋著「労働法を考える」新日本出版社 p117-119)

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◎「韓国の労働者たちが、現在、日本の企業別組合の現状と歴史を反面教師として、ヨーロッパ型の産業別組織を目指していることは大きな教訓になりますし、また、私たちに希望を示すもの」と。